フィンガープリントは新しいCookieである――ブラウザ識別の仕組みと対策
筆者はブラウザのフィンガープリントから一貫したニックネームを生成するデモを示し、Cookieに代わって個人を識別しうると解説している。Brave、Tor、Mullvad Browserなどは高度な識別対策を備えるとされる。
本記事は、ブラウザのフィンガープリントがサードパーティCookieの後継になりうるとする筆者の解説である。Googleが進めたCookie廃止の経緯と、フィンガープリントの仕組み、識別情報の強さ、対策の状況を整理している。
デモと識別の仕組み
筆者が公開したデモでは、ブラウザのフィンガープリントから一貫したニックネームが生成される。ニックネームはページの再読み込みやCookieの削除後も変わらず、別の端末では異なるものになるとされる。
「Is it different in incognito? Good. But it's always the same? Bad news.」
— Roy(記事の筆者)
リクエストからは、ブラウザ、言語、OS、IPアドレスが判明する。User-AgentやAccept-Languageといったヘッダーも、ブラウザ、OS、そのバージョンと言語を示す。
GPU、CPU、メモリサイズ、ディスプレイ情報、オーディオ処理、端末モデルといった計測値は、許可を求める表示なしに取得できるとされる。ページはOfflineAudioContext、WebGL、canvas、Intl、navigator、crypto.subtleなどのメソッドで指紋を組み立て、ニックネームは計測値のSHA-256ハッシュから選ばれる。
Cookie廃止の経緯
記事によると、2019年の時点でCookieはまだ話題の中心にあり、SafariとFirefoxはすでにサードパーティCookieをブロックしていた。EUはサードパーティCookieをめぐる議論を受けて同意バナーを導入した。
その後、Googleは2019年から1年後にCookieを廃止すると表明したとされる。Googleは「we will destroy cookies!!」と述べていた。記事は、5年後の時点でPrivacy Sandboxとフィンガープリントに関する経緯にも言及している。
記事は、情報量(サプライズ)とエントロピーの考え方を用いて識別の強さを説明している。ある回答が候補者の母集団を半分に絞れば、その情報は1ビットに相当するとされる。例として次の数値が挙げられている。
- 2人に1人が持つ特徴は1ビットに相当する。
- 8人に1人が持つ特徴(口ひげがある)は3ビットに相当する。
- 128人に1人が持つ特徴(片目である)は7ビットに相当する。
口ひげがあり片目である男性は、それぞれの特徴が独立であれば2048人に1人(11ビット)に当たるとされる。

記事によると、郵便番号(IPから推定)、生年月日、性別の組み合わせで米国人の60%超を一意に特定できるとされる。フィンガープリントは世界で唯一である必要はなく、サンプル規模の中で人を区別できるほど一意であれば足りるとされる。
対策を講じるブラウザ
Brave、Tor、Mullvad Browserは、現時点で高度なフィンガープリント対策を実装する主要ブラウザとされる。Braveはファーブリング(ノイズの付加)により、フィンガープリントを一貫しないものにするとされる。TorとMullvadは、全ユーザーが同じに見えるような手法を採るとされる。
ChromeとEdgeは、ウェブサイトのデータとファイルとの分離、許可のないアクセスの防止までにとどまるとされる。
フィンガープリントの一意性は、coveryourtracks.eff.orgで確認でき、各データ項目のエントロピーも示されるとされる。
筆者の見立て
- EUの動きが企業より速いなら、それは企業が手をこまぬいていることを意味すると解釈している。
- Google の Privacy Sandbox は出来が悪く独占禁止法上の懸念も生じたため、誰も利用していないと論じている。
- Mullvadは筆者の考えでは最良のVPN事業者の一つだと論じている。
- 間もなく筆者は、ユーザーについて友人より多くを知るようになると予想している。
- プライバシー拡張機能はユーザーをより特定しやすくし、賢い追跡者がそれを検知して悪用し