
樹木は「筋肉」で姿勢を補正——張力材形成の新たな役割を発見
INRAE と Clermont Auvergne 大学の研究チームは、樹木が幹の曲がりを張力材(tension wood)の形成を通じて補正できることを実証した。張力材は筋肉のように機能し、樹木が自らの形状を認識する固有感覚に基づいて形成される。

研究チームは、光と重力に対する向きを感知できない条件下に曲がった若い樹木を置いた。樹木に残された唯一の知覚は、自らの曲率を認識する能力だった。この実験設定では、水平回転プラットフォームを球内に置き、あらゆる方向から光を当てることで、重力と光の方向入力を排除した。10日間の予備期間を経て樹木を実験装置に移した結果、数週間にわたって幹は徐々に真っすぐになり、もとの直線状に戻った。
張力材の可塑的な形成機構
従来、張力材は幹の上側にのみ形成されると考えられていた。しかし今回の研究により、張力材は樹木の固有感覚に応じて幹のいずれの側にも形成されることが明らかになった。装置を作動させると、上側の張力材形成は停止し、反対側に同等の性質を持つ木が形成され、逆方向の引く力を生み出した。張力材は動物の筋肉と同様に拮抗的な役割を果たし、樹木の姿勢維持と運動を可能にする。

固有感覚と環境知覚の統合
植物は 2012年に INRAE 研究チームによって固有感覚(自らの身体部位の位置を認識する感覚)を持つことが実証されている。今回の知見は、樹木が光、重力、および自らの形状に関する情報を統合し、異なる方向に張力材を活性化させることを示している。張力材の形成は細胞レベルで制御される複雑な生物学的プロセスである。
INRAE 研究ディレクターの Bruno Moulia は、「我々が発見したのは、樹木の木質部で機能している真の感覚運動ループである。張力材の段階的活性化の調整が不十分だと過度な内部張力が生じ、木材品質に影響を及ぼす可能性がある」と述べた。また、「これらの知見は木材品質の向上、そして樹木がどのような状況下にあっても真っすぐで緊張のない状態でいられるようにするための応用研究を再構築する」と述べている。
INRAE 研究エンジニアの Félix Hartman は、「樹木の顕著な能力を明らかにするには高度な工夫が必要である。このプロジェクトでは、異なる分野の研究者が互いに補完的なスキルと視点を持ち寄ることで達成できた。時間と忍耐力が必要だが、こうした学際的な発見は努力の価値があることを示している」とコメントした。
筆者の見立て
- 樹木のこれらの重要な能力は、嵐や地滑りなど樹木の位置を変化させる極端な事象に直面した際の耐性に寄与する可能性を示唆している。
- これらの知見は木材品質の改善を目的とした応用研究を再構築する可能性を示唆している。
- 固有感覚に基づいた栽培植物の選抜に向けた新たな道を開く可能性が示唆されており、真っすぐで直立した植物の選別を促進し、穀物作物の倒伏対策に役立つ可能性がある。
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出典
Phys.org「Trees use a 'muscle' to correct their posture—a newly discovered role for tension wood」https://phys.org/news/2026-09-trees-muscle-posture-newly-role.html(New Phytologist の報道による)