
推論APIが囲い込む「セッション」――ポータビリティの喪失
Earendil が推論API プロバイダーの戦略を分析し、ユーザーがセッションを持ち運べない設計が広がっていると指摘した。暗号化された推論トークンや隠された検索結果、プロバイダーのみが復号できる圧縮コンテキストなど、意図的に非ポータブルな状態がセッションに組み込まれている。
推論API プロバイダーは、セッションの一部をプロバイダー専有の形式で返すようになっている。OpenAI、Google、Anthropic、DeepSeek、Moonshot、MiniMax といった主要プロバイダーは、ユーザーが別のモデルや別のプロバイダーへセッションを移行することを困難にする仕様を導入しているとされる。
プロバイダー固有の状態管理
OpenAI の Responses API はデフォルトで 30 日間の保持期限でレスポンスを保存する。Conversation に紐付けられたアイテムはこの 30 日 TTL の対象外とされている。Google の Gemini Interactions API はデフォルトで store: true で有効化され、有料版では 55 日間、無料版では 1 日間のインタラクション保持期限が設定されている。
Anthropic のドキュメントでは、思考ブロック(thinking blocks)はそれを生成したモデルに紐付けられており、モデルを切り替える際には削除すべき対象と記載されている。また Anthropic は思考ブロックを 「opaque and not intended to be human-interpretable」と説明している。
暗号化された中間状態
推論トークンやウェブ検索結果、圧縮コンテキストといった機能は、ユーザーの支払い対象となりながらも、プロバイダーのサーバーに保持された暗号化された状態でのみ返却される。これにより、別のモデルによるセッション継続が技術的に困難になる。
オープンソースの Codex クライアントでは 2026 年 6 月に 「Encrypt multi-agent v2 message payloads」というコミットがマージされた。Codex の未解決イシューでは 「the user cannot answer the simple question of what was that agent asked to do?」と指摘されている。
蒸留(Distillation)への対抗
Anthropic は 2026 年 2 月の投稿で、DeepSeek、Moonshot、MiniMax による蒸留キャンペーンを 「distillation attacks」と呼び非難した。Anthropic の商業利用規約では、顧客は自分の出力を所有するが、その出力を競争相手の AI モデル学習に使用することは禁止されている。
筆者の見立て
- Earendil は、ユーザーが保有するマシン上のトランスクリプトはセッション全体ではなく部分的なビューに過ぎず、運用上の状態はプロバイダーに帰属していると解釈している。
- 別の十分に能力を持つモデルも同じ方法では続行できないかもしれないが、何が起こったかを理解し、引き継ぐことは可能とみられるという見方を示している。
- ユーザーの蓄積されたコンテキストがひとつのプロバイダーにのみ解釈可能である場合、不幸なインセンティブが生じると示唆している。
- プロバイダーが蒸留キャンペーンに対抗する動きは、エコシステムへのロック・インを強化する効果を持つと論じている。
- ユーザーが他のプロバイダーへ移行できるという選択肢の存在が、プロバイダーにモデル品質、価格、信頼性で競争する規律をもたらすと予想している。
- より良いステートフル API を構築することに異議はないが、より良い性能とより少ないユーザーコントロールが結びついていることに対して意見を持っている。
この記事は元記事の事実のみに基づいて自動生成されました。
出典
Earendil「The Session You Cannot Take With You」https://earendil.com/posts/session-portability/