
米国の労働分配率が戦後最低に──COVID後の低下パターンを分析
TL;DR: 米国の労働分配率が戦後最低水準に落ち込み、COVID後の期間に前パンデミック水準から1.6ポイント低下した。ニューヨーク連銀の研究者らが過去の景気後退との比較分析を実施。
米国の労働分配率(経済産出のうち労働者の賃金・給与として支払われる部分の割合)が現在、戦後期間における最低水準に達している。ニューヨーク連邦準備銀行の Richard Audoly、Miles Guerin、Srinidhi Narayanan、Rachel Schuh の各研究者らが 2026年6月24日付で Liberty Street Economics に発表した分析によると、COVID後の期間における労働分配率の低下パターンは、過去の景気後退時の動きと比較する際に重要な示唆をもたらすという。
労働分配率の長期的推移
労働分配率は戦後期間を通じて、おおむね安定していた。20世紀後半を通じて約 63 パーセント付近で推移していたが、2000年代初頭から持続的な低下局面に入った。2007~2012年のグローバル金融危機(GFC)の際には特に急激な下落が発生。その後2010年代に一度安定したものの、COVID後の期間に再び低下し、パンデミック前の水準から 1.6 ポイント下回る水準まで落ち込んだ。
景気後退パターンとの比較

研究者らが過去の景気後退期との比較分析を実施したところ、COVID後の労働分配率の動きは2000年以前の景気後退パターンと類似していることが判明した。従来のパターンでは、景気後退時に労働分配率が上昇し、その後の回復期に低下する傾向が見られた。2000年以前のエピソードでは、その後の拡大局面の後半で労働分配率は再び上昇していた。
しかし、ドットコム不況と金融危機後の局面では、拡大期における労働分配率の低下幅がより急峻になっている。特に注目すべき点として、2000年代の景気後退後は、2000年以前の回復期と異なり、労働分配率は有意な反発を見せていない。
産業間シフトと産業内変化

研究者らは、産業間の再配置(sectoral reallocation)がこの低下に寄与しているかを検証した。医療や教育といった産業は製造業や農業よりも労働分配率が高い傾向にあり、これらの産業へのシフトが全体的な労働分配率を押し上げる可能性がある。
分析の結果、COVID パンデミック開始時に産業間の再配置が急増したが、その後は緩和し、より低い水準で安定したことが明らかになった。これは過去の景気後退では、より長期にわたる再配置と上昇が見られたことと対照的である。重要な発見として、COVID 期間中および前回の2つの景気後退期における集計的給与分配率の低下は、産業間シフトではなく、産業内での変化によってもたらされたことが判明した。
筆者の見立て
- 労働分配率が低下することは、生産性と価格、またはその両方が賃金よりも速いペースで上昇していることを意味すると論じている。
- COVID後の期間において、より高い労働分配率の産業からより低い労働分配率の産業へのシフトが進めば、産業内の労働分配率が一定であっても、集計的な労働分配率は低下する可能性を示唆している。
- 過去の景気後退の動きから判断すると、労働分配率が再び上昇するにはより長い拡大期が必要になると予想している。
- COVID後の低下が過去の景気後退と同じ周期的パターンに従い、過去のエピソードと同様の進化をたどるとの解釈を示している。
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出典
Liberty Street Economics「The Post‑COVID Decline in the Labor Share」https://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2026/06/the-post-covid-decline-in-the-labor-share/(U.S. Bureau of Labor Statistics、Federal Reserve Bank of St. Louis FRED データベース、U.S. Bureau of Economic Analysis の報道による)